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相続税の延納・物納の制度と条件
相続税の延納・物納の制度と条件
一括払いができない場合の分割・現物納付の方法
相続税は原則として申告期限(10ヶ月)までの現金一括払いですが、一括払いが困難な場合は「延納(分割払い)」または「物納(不動産などで納付)」を選択できます。いずれも申告期限までに申請が必要です。
まず「どの方法で払うか」を判断する
①
現金一括払い(原則・最もシンプル)
相続した預貯金・換金した株式・借入れなどで準備できる場合は一括払いが最も簡単です。延滞税・利子税が発生しません。
延滞税なし・手続き不要
②
延納(最大20年の分割払い)
現金が一括で準備できない場合。年払いで最大20年に分割できます。利子税(年0.3〜6.0%程度)がかかります。不動産などの担保提供が必要な場合があります。
申告期限までに申請 → 分割払い可能
③
物納(不動産・株式などで納付)
延納によっても金銭での納付が困難な場合に限り認められます。相続した財産そのものを国に納付します。
延納が困難な場合のみ申請可能
×
何もしない(放置)は厳禁
申告期限を過ぎると延滞税(年最大14.6%)・無申告加算税(15〜20%)が発生します。払えない場合でも必ず申告期限までに申告書を提出し、延納・物納の申請をしてください。
延滞税・加算税が雪だるま式に増加
延納の制度詳細
延納の適用要件
- 相続税額が10万円超であること
- 金銭で一時に納付することが困難な事由があること
- 申告期限(10ヶ月)までに延納申請書を税務署に提出すること
- 延納税額が100万円超または延納期間が3年超の場合は担保の提供が必要
- 担保として提供できる財産がない場合は延納が認められないことがある
| 財産の種類 | 延納期間 | 利子税(年) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 不動産等の割合が75%以上の場合(不動産部分) | 最長20年 | 0.3% | 不動産比率が高いほど有利 |
| 不動産等の割合が75%以上の場合(動産部分) | 最長10年 | 1.2% | |
| 不動産等の割合が50%以上75%未満(不動産部分) | 最長15年 | 0.6% | |
| 不動産等の割合が50%未満(一般動産等) | 最長5年 | 6.0% | 現金・預金・株式が多い場合 |
※利子税の実際の税率は「特例基準割合」によって変動します。現在(2024年)の実際の利子税率は上記より低くなっています(0.1〜2.0%程度)。申請時に税務署に確認してください。
延納の利子税シミュレーター
延納する相続税額
万円
延納期間
年
財産構成
延納税額500万円
年間利子税6万円/年
年間納付額(元本均等払いの場合)106万円/年
延納期間中の利子税合計(概算)15万円
延納期間中の総支払額(税金+利子税)
515万円
※元本均等払いの概算計算です。実際の利子税率は特例基準割合により異なります。税務署に確認してください。
物納の制度詳細
物納できる財産の優先順位
1
第1順位:国債・地方債・不動産・船舶
不動産が最も多く使われます。相続した土地・建物を国に納付します。
2
第2順位:社債・株式・証券投資信託の受益証券
上場株式・公社債など。第1順位の財産で物納できない場合に使用します。
3
第3順位:動産
自動車・機械・美術品など。第1・2順位で物納できない場合のみ。
物納の適用要件
- 延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
- 申告期限(10ヶ月)までに物納申請書と物納財産の明細書を提出すること
- 物納できない財産:抵当権などの担保権が設定されている不動産・境界が不明確な土地・地上権など使用権が設定されている土地・共有財産(共有者全員の同意がない場合)
- 物納の収納価格は相続税評価額(時価ではなく路線価など)が基準になります
延納 vs 物納 vs 不動産売却の比較
延納(分割払い)
不動産を手放さずに税を分割払い
利子税がかかる(年0.3〜6%程度)
最長20年の分割が可能
担保提供が必要な場合がある
不動産の賃料収入で返済できる
物納(現物納付)
利子税なし・現金不要
路線価評価額が収納価格(時価より低い)
不動産を手放すことになる
条件を満たさない財産は物納不可
延納が困難な場合のみ申請可能
不動産を売却して現金で納付するという選択肢も検討しましょう。時価での売却なら物納(路線価)より高い金額が手に入ることが多く、売却益(譲渡所得)に対する税金を払っても手取りが多くなる場合があります。相続税申告の10ヶ月以内に売却できるかどうかが鍵です。
延納・物納の申請で気をつけること
-
申告期限(10ヶ月)を過ぎると延納・物納を申請できない延納・物納の申請は必ず申告期限までに行う必要があります。期限を過ぎると延納・物納は認められず、延滞税が発生します。「払えない」と気づいたら早急に税理士に相談し、申告と同時に申請書を提出してください。
-
物納した不動産は取り戻せない(撤回は困難)一度物納が受理されると原則として取り消せません。物納前に不動産の売却・換金可能性を十分に検討してください。特に将来価値が上がる可能性のある不動産の物納は慎重に判断しましょう。
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物納財産の評価額が時価より低い点に注意物納の収納価格は相続税評価額(路線価ベース)が基準で、通常は時価より低くなります。例えば時価3,000万円の土地でも路線価が2,400万円なら2,400万円分の税額しか消えません。売却できる場合は売却の方が有利なことが多いです。
-
延納中に余裕ができたら繰上納付で利子税を節約延納中でも随時繰上納付(前払い)ができます。手元に資金ができたタイミングで残額を一括払いにすると利子税の発生を止められます。延納後の状況変化に応じて柔軟に対応しましょう。
よくある疑問
延納の担保として提供できる財産は何ですか?▶
国債・地方債・社債・株式・不動産などが担保として認められます。担保の価値は延納税額以上が必要です。担保として提供した財産は売却・処分が制限されます。担保として適切な財産がない場合は税理士に相談し、延納の可否や代替案を検討してください。
相続税を払うために借入れをする場合のメリット・デメリットは?▶
メリットは不動産を手放さずに済む・延納より金利が低い場合がある・手続きが比較的簡単です。デメリットは金利負担・返済能力が必要・金融機関の審査があります。相続した不動産を担保に融資を受けるケースが多く、延納利子税と銀行金利を比較した上で有利な方を選びましょう。特に不動産から賃料収入がある場合は借入れで納税し賃料で返済する方法が有効です。
遺産分割が未完了の場合でも延納・物納の申請はできますか?▶
できます。遺産分割が未完了の場合は法定相続分で相続したと仮定して申告・納税します。その後遺産分割が成立したら修正申告または更正の請求で税額を調整します。延納・物納も法定相続分ベースで申請できますが、分割確定後に内容の見直しが必要になる場合があります。税理士に相談しながら進めることを推奨します。
物納した不動産はその後どうなりますか?▶
物納された不動産は国有財産になり、財務省(財務局)が管理・処分します。一般競争入札などで売却されることが多いです。物納後に国がその不動産を「公売」する際、元の所有者(物納した相続人)が優先して買い戻す制度(物納撤回・買戻し)はありませんが、公売に参加することは可能です。
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