トラブル対策 > 遺言書の書き方のポイント

争族を防ぐための遺言書の書き方のポイント
無効にならない・遺留分を侵害しない・気持ちを伝える

遺言書は「書いた」だけでは不十分です。無効になるリスク・遺留分侵害による争い・気持ちが伝わらないという3つの落とし穴を避けることが争族防止の核心です。特に公正証書遺言が最も確実な選択肢です。

まず「どちらの遺言書にするか」を決める
自筆証書遺言
自分で手書きする遺言書
費用がかからない(無料)
いつでも・一人で作成できる
方式不備で無効になるリスクがある
死後に家裁の検認が必要(法務局保管を除く)
紛失・偽造・破棄のリスクがある
2020年から法務局保管制度あり(検認不要・無効リスク低減)
公正証書遺言(推奨)
公証人が作成に関与する遺言書
費用がかかる(数万〜十数万円)
公証役場での手続きが必要(証人2名)
方式不備で無効になるリスクがほぼゼロ
検認不要・死後すぐに実行できる
原本が公証役場に保管・紛失リスクなし
争族防止には最も確実な選択肢
推奨:争族防止が目的であれば迷わず公正証書遺言を選んでください。自筆証書遺言は費用がかからない反面、無効リスク・紛失リスク・偽造リスクが残ります。費用(数万円〜)は将来のトラブル防止コストとして見合う投資です。

遺言書作成前の確認チェックリスト(進捗を管理する)
0 / 14 完了
内容の準備(争族防止の核心)
財産目録を作成した(不動産・預金・株式・保険・負債を全てリストアップ)必須
法定相続人の全員を確認した(隠し子・認知した子・前妻の子がいないか戸籍で確認)必須
各相続人の遺留分を計算し、侵害していないか確認した(または侵害するなら理由を付言に記載)必須
遺言書でカバーされていない財産がないか確認した(漏れがある財産は遺産分割協議が必要)必須
受取人が先に亡くなった場合の「予備的遺言(補充指定)」を記載した推奨
不動産は登記記録どおりの正確な表記(所在・地番・家屋番号)で記載した必須
自筆証書遺言の場合の形式確認
全文を自分の手書きで書いた(財産目録を除く部分はパソコン不可)必須
年月日を完全に記載した(○年○月○日 — 「吉日」は無効)必須
氏名(フルネーム)を記載した必須
押印をした(認印・拇印でも可だが実印が望ましい)必須
加筆・訂正がある場合は所定の方式(押印+署名+字数記載)に従った注意
気持ちと配慮
付言事項(なぜこの分け方にしたか・家族への感謝・メッセージ)を記載した強く推奨
介護・事業貢献をした相続人への感謝・その取り分が多い理由を付言に記載した推奨
遺言書の存在・保管場所を信頼できる家族1〜2名に伝えた(または法務局に保管)実行後

よくある無効・争いになる書き方のNG例と正しい書き方
NG① 日付が特定できない書き方
令和6年吉日 遺言書を作成する
✗ 「吉日」では日付が特定できず遺言全体が無効になります。複数の遺言書があるとき優先順位が決まらなくなります。
OK① 年月日を完全に記載する
令和6年5月15日 遺言書を作成する
✓ 年・月・日を全て記載します。書いた日と異なる日付でも遺言の効力には影響しません。
NG② 不動産を曖昧に記載する
東京都〇〇区にある自宅の土地建物を長男に相続させる
✗ 複数の不動産がある場合にどれを指すか特定できず争いになります。登記記録(地番・家屋番号)どおりに記載してください。
OK② 不動産は登記記録どおりに記載する
東京都〇〇区〇〇町1丁目2番3号 土地 地番2番3 地目宅地 地積120.00㎡ 建物 家屋番号2番3 種類居宅 構造木造2階建 床面積85.00㎡ 上記不動産を長男田中一郎(昭和○○年○月○日生)に相続させる
✓ 登記事項証明書を法務局で取得し、記載内容をそのまま転記します。
NG③ 受取人が先に亡くなった場合を考慮していない
長男田中一郎に全財産を相続させる
✗ 長男が先に亡くなった場合、遺言書が無効になり法定相続になってしまいます。予備的遺言(補充指定)が必要です。
OK③ 予備的遺言(補充指定)を記載する
長男田中一郎に全財産を相続させる。 ただし田中一郎が遺言者より先に死亡した場合は、田中一郎の子(遺言者の孫)に等分して相続させる。
✓ 受取人が先に亡くなるケースを想定して「その場合は誰に」という予備的な指定を記載します。
NG④ 遺言書でカバーされていない財産がある
自宅不動産を長男に、預金を次男に相続させる。
✗ 株式・保険・その他の財産が記載されていない場合、その財産は遺産分割協議が必要になります。全財産を記載するか「その他の財産は全て〇〇に相続させる」という包括条項を入れてください。
OK④ 包括条項で全財産をカバーする
自宅不動産を長男に、預金〇〇銀行〇〇支店普通預金(口座番号〇〇〇〇)を次男に相続させる。 上記以外の一切の財産を長女田中花子に相続させる。
✓ 「上記以外の一切の財産を〇〇に」という包括条項で漏れをなくします。

遺留分侵害チェック — 遺言の内容が遺留分を侵害していないか確認
遺産総額 万円
相続人の構成
遺言で最も少なく受け取る相続人の取得額 万円
遺産総額5,000万円
最少取得者の遺留分625万円
遺言での取得額500万円
遺留分を侵害しています

付言事項(気持ちを伝えるメッセージ)のサンプル
付言事項 私がこの遺言書を作成するにあたり、家族全員への感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。 長男・一郎へ:長年、我が家の家業を支えてくれたことへの感謝として、事業用不動産を一郎に遺すことにしました。事業を引き継いでくれることへの期待と感謝を込めています。 次男・二郎へ:一郎に不動産を多く渡す分、二郎には現金・金融資産を多く残しました。不公平に感じるかもしれませんが、二郎が一郎の事業を陰から支えてくれていることは父としてよく知っています。兄弟仲よく支え合ってくれることを願っています。 長女・花子へ:遠くに嫁いでも、いつも帰省のたびに明るくしてくれてありがとう。母の介護を手伝ってくれたことも忘れません。 最後に、家族全員が仲良く、助け合って生きていってくれることが私の一番の望みです。 令和○年○月○日 田中 太郎
付言事項は法的効力を持ちませんが、なぜその分け方にしたかを伝えることで不満・誤解・感情的対立を和らげる効果があります。「公平でないと感じるかもしれないが理由がある」という説明が争族防止の最後の砦です。

遺言書作成で特に気をつけること
  • !
    古い遺言書を放置すると複数の遺言書問題が起きる
    過去に作成した遺言書があれば、新しい遺言書に「前の遺言書を全て撤回する」と明記するか、古い遺言書を自分で破棄してください。複数の遺言書が見つかると「どちらが有効か」という争いになります。
  • !
    家族構成・財産が変わったら遺言書を見直す
    子の誕生・離婚・再婚・相続人の死亡・財産の売買・贈与などで遺言書の内容が実態と合わなくなります。年に1回は内容を見直し、必要に応じて作り直してください。公正証書遺言は修正のたびに費用がかかりますが、その価値は十分あります。
  • 遺言執行者を指定しておく
    遺言の内容を実行する「遺言執行者」を遺言書に指定しておくと、相続手続きがスムーズになります。弁護士・司法書士を指定すると、相続人間の対立があっても中立的に実行してもらえます。特に遺産が多い・相続人関係が複雑な場合は必須です。
  • 認知症になる前に作成する — 判断能力があるうちに
    認知症で意思能力がなくなると遺言書を作成できません。「まだ元気だから後で」という先送りが最大のリスクです。元気で判断能力がある今こそ遺言書を作成する最適なタイミングです。

よくある疑問
公正証書遺言の作成費用はいくらかかりますか?
公証役場の手数料は財産の価格によって変わります(公証人手数料令)。財産1億円以下の場合の目安:1,000万円以下→1万7,000円・3,000万円以下→2万3,000円・5,000万円以下→2万9,000円・1億円以下→4万3,000円程度です(目的財産ごとに計算するため複数の財産があると合計額は増えます)。これに証人2名への謝礼(1〜2万円)・行政書士や弁護士に依頼する場合の報酬(5〜30万円)が加わります。トラブル防止効果を考えれば十分に見合う投資です。
遺言書で「長男に全財産を与える」と書いたら、次男・長女は何も受け取れませんか?
遺言書として有効ですが、次男・長女には「遺留分」があります(法定相続分の1/2)。遺留分を侵害された相続人は長男に対して遺留分侵害額請求(金銭の支払い)ができます。争族防止の観点からは遺留分を侵害しない内容にするか、侵害する場合は付言事項でその理由を丁寧に説明することを推奨します。
遺言書に書いてない財産はどうなりますか?
遺言書に記載されていない財産は、通常の遺産分割協議(相続人全員の話し合い)で分割します。これを防ぐには「上記以外の一切の財産を〇〇に相続させる」という包括的な条項を遺言書に入れることです。また遺言書作成後に新たに取得した財産(後から購入した不動産・開設した口座など)も漏れる可能性があるため、定期的な見直しが重要です。
法務局の自筆証書遺言保管制度を使うメリットは何ですか?
主なメリットは①家庭裁判所の検認が不要(死後すぐに実行できる)②紛失・偽造・破棄のリスクがない③相続人が遺言書の存在を検索できる(遺言書情報証明書の交付申請)、です。費用は3,900円(保管申請手数料)と非常に安価です。ただし法務局は遺言書の内容の有効性・適切さはチェックしないため、内容の間違い・遺留分侵害などのリスクは自筆証書遺言と同様に残ります。公正証書遺言のような「内容の確実性」は担保されません。
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