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数次相続の手続きと注意点
「相続が終わらないうちにまた相続」が重なった場合の対処法

「父が亡くなって相続手続きをしている最中に、母も亡くなってしまった」——これを数次相続(すうじそうぞく)といいます。未解決の遺産分割が残ったまま新たな相続が発生するため、相続人の範囲・遺産分割協議の進め方・戸籍の取り方などが通常の相続より複雑になります。

よく混同される「代襲相続」との違いを整理する
数次相続
数次相続
遺産分割が未完了のうちに次の相続が発生
一次被相続人(父)が死亡→協議中に二次被相続人(母)が死亡
母はいったん父の財産の相続権を取得してから死亡
母の相続人(子)が母の相続権を引き継いで父の相続にも参加
相続税の申告は2件別々に必要
相次相続控除が使える場合あり(10年以内)
代襲相続
代襲相続
相続開始前に相続人となるべき人が死亡
父の死亡時にすでに長男は死亡していた
長男は相続権を一度も取得しない
長男の子(孫)が長男に代わって直接相続人になる
相続税の申告は1件のみ
孫(代襲者)の相続税は2割加算なし
💡 判断のポイント:問題の相続人が「被相続人(父)より先に亡くなっていたか、後に亡くなったか」で決まります。父より後に亡くなった(相続開始後に死亡)→数次相続。父より先に亡くなっていた→代襲相続

ケース別シミュレーション — 誰が何を相続するか確認する
基本ケース(父→母が協議中に死亡)
子が1人のみ(最もシンプル)
中間の相続人が放棄した場合
3世代にわたる数次相続
不動産の相続登記(中間省略登記)
①死亡 一次被相続人 ②死亡 二次被相続人 協議中(未分割)に母が死亡 →数次相続発生 長男 父の相続人 +母の相続人 次男 父の相続人 +母の相続人 ⚠️ 協議は「父の遺産分割」と「母の遺産分割」の2件が必要 長男・次男が両方の協議書に署名押印(母の相続分も含めて協議) 父の遺産を取得 父の遺産を取得
⚠️ 父の相続と母の相続、2つの遺産分割協議が必要です
母は父の相続手続き中に亡くなっているため、①父の遺産分割協議(長男・次男が参加)と②母の遺産分割協議(長男・次男が参加)の2件を別々に行います。父の遺産に対する母の相続分(例:1/2)は、母の相続人である長男・次男が引き継いで協議します。実務上は2件をまとめて進めることが多いですが、協議書は別々に作成します。
相続人(父の相続+母の相続)
被相続人
①死亡 一次被相続人 ②死亡 二次被相続人 一人っ子 (唯一の相続人) ✓ 子が1人の場合の特別ルール 父の遺産も母の遺産も全て一人っ子が取得することは確定しているため、 遺産分割協議書を1通にまとめて作成できます(実務上の簡略化)
子が1人のみの場合は最もシンプルなケースです
相続人が一人っ子しかいない場合、父の遺産も母の遺産もすべて子が取得することが確定しています。この場合、実務上は「父の遺産および母の遺産のすべてを子が取得する」という内容の協議書を1通作成し、同一書面にまとめることができます。ただし相続税の申告は父の相続と母の相続で別々に行います(それぞれ10ヶ月以内)。
①死亡 ②死亡 父の相続を放棄 長男 父の相続人 相続分1/2 次男 父の相続人 相続分1/2 重要:母が父の相続を放棄すると、代襲相続は発生しない 母の子(長男・次男)は母の放棄によって父の相続分を引き継げない
⚠️ 中間の相続人が父の相続を放棄すると、その相続分は子(孫)に引き継がれません
母が父の相続手続き中に相続放棄をした後に死亡した場合、母の子(長男・次男)は母が放棄した「父の相続分」を引き継ぐことはできません。放棄は最初から相続人でなかったとみなされるためです。この場合、父の相続人は長男・次男のみとなり(各1/2)、母の相続は別途行われます。相続放棄を検討している場合は、数次相続への影響を専門家に確認してください。
父の相続人(長男・次男)
母(父の相続を放棄)
祖父 ①死亡 一次被相続人 祖母 ②死亡 二次被相続人 ③死亡 三次被相続人 子A 3相続で全部取得 子B 3相続で全部取得 ⚠️ 3世代にわたる数次相続が発生した場合 遺産分割協議書は「祖父の遺産」「祖母の遺産」「父の遺産」の3件が必要 相続税申告も3件(各10ヶ月以内)。戸籍収集も複雑になるため専門家への依頼を強く推奨
⚠️ 3世代にわたる場合は協議書3件・相続税申告3件・戸籍収集が非常に複雑になります
祖父→祖母→父と次々に被相続人が増える場合、それぞれの遺産分割協議書を別々に作成し、相続税申告もそれぞれ10ヶ月以内に行う必要があります。最終的に財産を引き継ぐ子(孫)は3件の協議書すべてに関与します。戸籍の収集範囲も広がり、専門家への依頼が事実上必須です。
🏠 不動産 登記名義:祖父 祖父 ①死亡 ②死亡 最終取得者 相続(未登記) 相続(最終取得) ✓ 中間省略登記(数次相続の特例) 数次相続の場合、中間の相続人(父)への所有権移転登記を省略して 祖父名義から直接子名義に一度で移転できます(一定要件あり) 中間の相続人が1人しかいない場合に限って認められます
中間省略登記で、祖父名義→子名義へ直接登記できる場合があります
数次相続で不動産の登記をする場合、①中間の相続人(父)への所有権移転登記②父から子への所有権移転登記、の2段階の登記が原則必要です。ただし中間の相続人(父)が1人しかいない場合に限り、祖父名義から直接子名義に「数次相続の中間省略登記」ができます。これにより登録免許税・手続きコストを削減できます。中間の相続人が複数いる場合は省略できません。

数次相続の重要ルール整理
遺産分割協議書は被相続人ごとに作成
数次相続では「父の遺産分割協議書」と「母の遺産分割協議書」を別々に作成するのが原則。子が1人の場合のみ1通にまとめることが認められる場合あり。
相続税の申告は2件・それぞれ10ヶ月以内
父の相続税申告(父の死亡から10ヶ月以内)と母の相続税申告(母の死亡から10ヶ月以内)は別々に申告する。申告期限が重なることもあるため注意が必要。
相次相続控除で二重課税を緩和できる
一次相続(父)から10年以内に二次相続(母)が発生した場合、二次相続の相続人は一次相続税の一部を控除できる「相次相続控除」が使える(経過年数に応じて逓減)。
放棄は「各自の相続」ごとに行う必要がある
数次相続では「父の相続の放棄」と「母の相続の放棄」はそれぞれ別の手続き。父の相続を放棄した人が母の相続は受ける、ということも可能。
戸籍収集は被相続人ごとに必要
父の相続手続きと母の相続手続きそれぞれに戸籍謄本が必要。法定相続情報証明書も被相続人ごとに取得が必要。書類収集の範囲が広くなる。
中間省略登記は条件付きで利用可能
不動産登記の場合、中間の相続人が1人であれば祖父→子への直接移転登記(中間省略)ができる。中間者が複数いる場合は省略不可で2段階の登記が必要。

数次相続が発生した場合の手続きの進め方
1
「何次の相続が重なっているか」を整理するまず全体把握
被相続人の死亡順・日付・現時点の相続人を確認します。「父が1月に死亡→3月に母も死亡」のように時系列を整理し、何件の相続が発生しているかを明確にします。これにより遺産分割協議の件数・相続税申告の件数・申告期限が確定します。
2
各被相続人の戸籍謄本・相続人を確定する被相続人ごとに
父の相続手続き用の戸籍謄本一式(父の出生〜死亡)と母の相続手続き用の戸籍謄本一式(母の出生〜死亡)を別々に収集します。法定相続情報証明書も父用・母用を別々に取得します。戸籍収集の範囲が広がるため、郵送請求または行政書士への依頼を推奨します。
3
各相続の放棄・限定承認を期限内に判断する各3ヶ月以内
相続放棄は「各被相続人の相続開始を知った日から3ヶ月以内」という期限があります。父の相続の放棄と母の相続の放棄はそれぞれ別の期限があります。債務(借金)がある場合は「父の相続の放棄はするが母の相続は受ける」という組み合わせも検討してください。期限を過ぎると単純承認とみなされます。
4
各被相続人の遺産分割協議書を作成する別々または合算
原則として被相続人ごとに別の遺産分割協議書を作成します。例外として「子が1人のみ」の場合は1通にまとめることもできます。協議書には「父の遺産」と「母の遺産」を明確に区分して記載します。全員が実印で押印し印鑑証明書を添付します。
5
相続税の申告・納付を各被相続人の期限内に行う各10ヶ月以内
父の死亡を知った日から10ヶ月以内に「父の相続税申告」、母の死亡を知った日から10ヶ月以内に「母の相続税申告」を行います。10年以内の数次相続なら「相次相続控除」の適用により二次相続の税負担を軽減できます。相続税専門の税理士に2件まとめて依頼することで費用・手間を節約できます。
6
不動産の相続登記・各種名義変更を行う完了
遺産分割協議書に基づいて不動産の相続登記を行います(2024年4月以降義務化・相続開始を知った日から3年以内)。数次相続の場合、中間省略登記(中間の相続人が1人のみの場合)を利用すれば登録免許税を節約できます。銀行口座・証券口座の名義変更も各協議書を使って手続きを進めます。

数次相続で特に注意すべきポイント
相続税の申告期限が2本走る — カレンダー管理を徹底する最重要
父の相続税申告(父の死亡から10ヶ月)と母の相続税申告(母の死亡から10ヶ月)が同時に進行します。父が1月に死亡・母が3月に死亡した場合、父の申告期限は11月、母の申告期限は翌年1月と2本の期限が重なります。期限を1日でも過ぎると無申告加算税・延滞税が発生します。税理士への早期依頼と期限のカレンダー管理を徹底してください。
「父の遺産」の一次相続で配偶者控除を使った後に母が亡くなった場合の扱い税務注意
父の相続税申告で「母に全財産を相続させる」とした場合、配偶者控除で税額がゼロになります。しかしその後母が亡くなると、母が相続した財産(父の遺産)にも母固有の財産にも相続税が課かかります(配偶者控除は使えず)。一次相続の配偶者控除の使い方が二次相続(数次相続)の税負担に直結するため、両方を見越した設計が必要です。
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相次相続控除は10年以内の場合に積極的に活用する節税
一次相続(父)から10年以内に二次相続(母)が発生した場合、二次相続の申告で「相次相続控除」を使えます。控除額=一次相続税額×(10年−経過年数)÷10の式で計算します。父の死亡翌年に母が死亡した場合は前回税額の約90%が控除対象になります。二次相続の申告書作成時に税理士に必ず確認してもらってください。
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遺産分割が完了していない状態での二次相続発生への対応実務対応
父の遺産分割がまったく未着手の状態で母が亡くなった場合、母の相続人(長男・次男)が父の遺産に対する母の相続分(権利)を引き継いで協議に参加します。この場合「父の遺産分割協議」には長男・次男が「自分の相続分+母から引き継いだ相続分」の両方について合意する必要があります。協議書の記載内容が通常より複雑になるため、司法書士・弁護士への依頼を強く推奨します。
早期に専門家チームに一括依頼するとコストと手間を削減できる効率化
数次相続では「戸籍収集(行政書士)」「相続税申告×2件(税理士)」「不動産登記(司法書士)」が同時並行で必要になります。各専門家をバラバラに探すより、相続に強い税理士または弁護士事務所にまとめて依頼することで専門家間の連携がスムーズになり、書類の二重収集・連絡の手間を削減できます。報酬の見積もりを取って比較してから依頼先を決めてください。

よくある疑問
数次相続と代襲相続はどちらの場合に相続税の2割加算がかかりますか?
2割加算は「法定相続人以外の人が遺贈等で財産を受け取った場合」や「法定相続人であっても孫など一親等の血族以外・配偶者以外の場合」に適用されます。数次相続の場合、二次被相続人(母)の相続人として子が父の遺産を取得するのは通常の相続であり、2割加算は原則適用されません。一方、代襲相続で孫が祖父の財産を直接相続する場合も代襲相続人としての取得であれば2割加算の対象外です。ただし遺言書による遺贈で孫が取得する場合は2割加算の対象になります。
数次相続で相続放棄の期限(3ヶ月)が重なった場合、どう対処しますか?
数次相続では「各被相続人の相続を知った日から3ヶ月以内」という期限がそれぞれ独立して走ります。父の相続を知った日と母の相続を知った日が近い場合、2本の放棄期限が同時に進行します。期限に余裕がない場合は家庭裁判所に「相続の承認・放棄の期間伸長申立て」(申立て費用:800円程度)をすることで期間を延ばせます。申立ては期限内に行う必要があります。弁護士・司法書士に早急に相談してください。
数次相続で「父の遺産を誰も相続しない(全員が放棄した)」場合はどうなりますか?
父の相続人全員(母・子)が相続放棄をした場合、父の遺産は「相続人不存在」状態になります。この場合、家庭裁判所に相続財産管理人の選任が申し立てられ、財産は最終的に国庫に帰属するか特別縁故者に分与されます。ただし母が放棄した後に母が亡くなった場合でも、母の子(孫)が父の遺産を引き継ぐことはできません(放棄は遡及して相続人でなかったとみなされるため)。全員放棄を検討する場合は必ず弁護士に相談してください。
数次相続で遺産分割協議がまとまらない場合、調停はどうなりますか?
数次相続で協議がまとまらない場合、通常の相続と同様に家庭裁判所への遺産分割調停の申立てができます。ただし「父の遺産」と「母の遺産」が混在するため、調停も2件並行で進む場合があります。調停では中間の被相続人(母)の法定相続分を引き継いだ最終相続人全員が参加者になります。弁護士への依頼が事実上必須です。
数次相続で未登記の不動産がある場合、登記はどうすればよいですか?
数次相続の場合、中間の相続人(母)が1人であれば「中間省略登記」により祖父(一次被相続人)名義から直接子(最終取得者)名義に移転登記できます。これにより2件分の登録免許税・司法書士費用を削減できます。ただし中間の相続人が複数いる場合は省略できず、2段階の登記が必要です。不動産の相続登記は2024年4月以降義務化されており(相続開始を知った日から3年以内)、未登記のまま放置すると10万円以下の過料の対象になります。
「父の相続中に母も亡くなった」「数次相続の手続きを一括して任せたい」
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