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非上場株式・事業承継税制の活用
後継者への株式承継で生じる多額の相続税・贈与税を猶予・免除する

中小企業のオーナーが亡くなると、自社株式が相続財産として高額に評価され、多額の相続税が後継者にのしかかります。「事業承継税制」を活用すると、要件を満たす限り相続税・贈与税の納税を猶予し、最終的に免除することができます。制度は複雑ですが、活用しないと廃業せざるを得ないケースもあるため、早期の対策が不可欠です。

⚠️ 事業承継税制を活用しない場合のリスク
非上場株式の評価額が数億円〜数十億円になることも。相続税の納税のために自社株を売却・廃業を余儀なくされるケースがある
例:評価額5億円の自社株式を後継者が相続→最高税率55%で約2億円超の相続税が発生。現金がなければ株式売却か銀行借入が必要。事業承継税制を使えばこの税額を猶予・最終的に免除できます。
※特例措置の申請期限:2027年3月31日(特例承継計画の提出期限)に要注意
特例措置(2018〜2027年)
事業承継税制の特例措置
株式全部の相続税・贈与税を猶予・免除
猶予割合:100%(全株式)
後継者:最大3人まで対象
特例承継計画を2027年3月31日までに提出
承継後5年間の経営要件あり
免除事由(廃業等)の要件が一般措置より広い
贈与税は先代が存命中でも活用可能
一般措置(恒久的制度)
事業承継税制の一般措置
発行済株式の2/3まで・税額の80%を猶予
猶予割合:発行済株式の2/3まで・税額の80%
後継者:1人のみ
計画提出期限なし(恒久的制度)
承継後5年間の経営要件あり
猶予割合が特例より低いため実効性は限定的
特例措置期限後も利用可能

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事業承継税制の要件と手続き
非上場株式の評価方法
生前からの対策ロードマップ
ℹ️ 事業承継税制(特例措置)は「特例承継計画の提出(2027年3月31日まで)」が適用の前提です。計画提出後に承継を実施することが必要で、計画提出だけでは不十分です。
① 先代経営者(贈与者・被相続人)の要件
会社の代表者であったこと(相続開始直前または贈与直前まで)
贈与・相続開始直前に発行済株式総数の50%超を保有し、かつ後継者を除く株主の中で最も多くの株式を保有していたこと
贈与の場合:贈与の時点で代表者を退任していること(ただし有給役員は可)
② 後継者(受贈者・相続人)の要件
会社の代表者であること(承継時点または承継後一定期間以内に就任)
承継時に20歳以上(相続の場合は年齢制限なし)
承継時に3年以上継続して役員等であること(相続の場合は除く)
承継後に発行済株式の50%超を保有し、かつ同族関係者の中で最多保有者であること
特例措置:後継者は最大3人まで(各人が10%以上を取得すること)
③ 会社の要件
中小企業者であること(中小企業基本法の定義による)
上場会社・風俗営業・資産管理会社に該当しないこと
承継時に常時使用する従業員が1人以上いること
純粋な持株会社・投資目的の資産管理会社は原則対象外(一定の要件で対象となる場合あり)
④ 承継後5年間の継続要件(雇用確保・経営継続)
雇用確保要件(特例措置):5年間平均で承継時の雇用の80%以上を維持。ただし未達成でも「やむを得ない理由の報告」で猶予継続が可能(特例措置の緩和)
後継者が代表者であり続けること(倒産・死亡等の例外を除く)
猶予対象となった株式を継続保有すること(売却・贈与禁止)
5年間の都道府県庁への年次報告・税務署への継続届出が必要
⑤ 猶予の打ち切り(猶予税額の全額または一部納付)が生じる場合
後継者が株式を売却・贈与・質入れした場合
後継者が代表者を退任した場合(特定の例外を除く)
会社が解散・清算した場合(ただし免除規定あり)
5年間の継続届出・年次報告を怠った場合
⚠️ 非上場株式の評価は市場価格がないため複雑です。会社の規模・業種・財務状況によって評価方法が異なり、評価額の差が数億円に及ぶこともあります。必ず事業承継専門の税理士に依頼してください。評価の誤りは追徴課税・申告漏れのリスクに直結します。
大会社 類似業種比準方式 — 上場会社の株価と比較して評価
評価額=類似業種の株価 × (配当÷類似配当 + 利益÷類似利益 + 純資産÷類似純資産)÷ 3 × 比準割合(0.7)
国税庁が毎月公表する「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」を使用
一般的に純資産価額方式より低く評価されることが多く、節税効果が高い
大会社(総資産・従業員数による基準)に適用。中会社は折衷方式
直前3期分の決算書(配当・利益・純資産)が必要
小会社 純資産価額方式 — 会社の純資産を相続税評価額で再計算して評価
評価額=(相続税評価ベースの総資産 − 負債 − 含み益への法人税等相当額)÷ 発行済株式数
会社が保有する資産を相続税評価額で計算し直した「純資産」を株数で割った価格
不動産・株式などに含み益がある場合、評価額が高くなりやすい
小会社(大会社・中会社以外)に適用。中会社との折衷方式も選択可
会社の貸借対照表・不動産の固定資産税評価証明書などが必要
中会社 折衷方式 — 類似業種比準と純資産を規模に応じて按分
評価額=類似業種比準価額 × L + 純資産価額 × (1 − L) ※Lは0.5〜0.9(会社規模による)
中会社はL値(比準割合)の選択によって評価額が変わる
大きい方の会社規模が適用されると類似業種の比重が高くなり評価が低くなりやすい
会社規模の判定は総資産価額・従業員数・売上高で行う
💡 評価を下げる方法:①役員退職金の支給(純資産を減少させる)②不動産投資による資産の組み替え③株式保有の適正化④不要資産の処分 — これらを相続前に計画的に実施することで評価額を下げられます。生前対策として事業承継専門の税理士と10年以上の長期計画を立てることが重要です。
✓ 事業承継は「相続が発生してから動く」では遅すぎます。相続税評価額を下げる対策・後継者育成・承継計画の策定は最低でも10年前から始めることが理想です。以下のロードマップを参考に優先順位をつけて進めてください。
10年
後継者を決定し・育成を開始する最初のステップ
後継者(子・役員・第三者)を明確にし、段階的に経営権を移譲する計画を立てます。後継者が役員として3年以上在籍することが事業承継税制の要件のため、早期に役員就任させることが重要です。後継者がいない場合はM&A(第三者承継)の検討を早めに行ってください。
7〜10年
自社株式の評価額を把握・引き下げ対策を開始する評価対策
事業承継専門の税理士に現時点の自社株式の評価額を試算してもらい、評価を下げる対策を計画的に実施します。主な対策:①役員退職金の設定(純資産を下げる)②不要資産の処分③収益力の調整④資産管理会社の整理。評価対策は時間をかけるほど効果が大きくなります。
5〜7年
特例承継計画を作成・都道府県庁に提出する期限:2027年3月31日
事業承継税制(特例措置)を活用するには、2027年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県庁に提出する必要があります。計画書の作成には認定経営革新等支援機関(税理士・商工会等)の指導・確認が必要です。計画提出後5年以内(2027年3月31日まで)に承継を完了する必要はありませんが、計画提出は必須条件です。
3〜5年
生前贈与による株式承継(贈与税の事業承継税制)を実施する生前承継
先代が存命中に後継者へ株式を贈与することで、贈与税の納税猶予・免除を受けられます。生前贈与は相続前に承継を完了できるため、相続時の手続き・争族リスクを回避できます。贈与時に先代が代表者を退任していること(有給役員は可)が要件です。
相続時
相続税の事業承継税制の申告を相続開始から8ヶ月以内に完了させる申告期限
事業承継税制を相続で活用する場合、相続税の申告期限(相続開始を知った日から10ヶ月以内)より早い8ヶ月以内に都道府県知事の認定を受ける必要があります(認定申請→認定→申告の順)。事前に書類を整備していなければ期限に間に合いません。相続発生後すぐに事業承継専門の税理士に連絡してください。
承継後5年
5年間の継続要件を満たし・毎年報告を続ける維持期間
承継後5年間は①都道府県庁への年次報告②税務署への継続届出③雇用80%以上の維持④後継者が代表者であること⑤猶予株式の継続保有、の5要件を維持する必要があります。1つでも違反すると猶予税額の全部または一部の納付が求められます。5年経過後は猶予が継続(税務署への届出は3年ごとに)します。
免除事由
猶予税額が免除される主な事由最終的な免除
①後継者が死亡した場合②後継者が次の代への事業承継税制を適用した場合③特例措置:再承継後に経営が困難な場合の廃業(株式の時価での譲渡)④一般措置:破産手続開始決定等の場合——これらの事由が発生した場合、猶予税額が全額免除されます。承継が成功し事業を継続した場合の最終的な免除は「後継者の次世代への承継時」になります。

特例措置 vs 一般措置 — 主な違いの比較
比較項目 特例措置(2018〜) 一般措置(恒久制度)
対象株式 全株式(発行済株式の全部) 2/3まで(発行済株式総数の2/3)
猶予割合 100%(相続税・贈与税全額猶予) 80%(相続税は贈与税は100%猶予)
後継者の人数 最大3人 1人のみ
計画提出 特例承継計画の提出が必須
期限:2027年3月31日
計画提出不要(恒久的に申請可能)
雇用確保要件 5年間平均80%以上。未達成でも報告で継続可 5年間毎年80%以上。未達成で猶予が打ち切られる
経営困難時の免除 あり(廃業・M&A時に株式時価で精算後の差額免除) 限定的
承継後の株式売却 売却時に猶予税額を時価ベースで精算(差額免除の場合あり) 売却時に猶予税額を全額納付
💡 現時点(2027年3月31日の特例承継計画提出期限前)であれば、圧倒的に有利な「特例措置」を優先して活用することを推奨します。特例措置の計画提出期限を逃すと一般措置しか使えなくなります。

実務上の重要な注意点

よくある疑問
事業承継税制を使うとその後ずっと株式を保有し続けなければなりませんか?
猶予期間中(承継後5年間の経営継続要件中)は猶予対象の株式を保有し続ける必要があります。5年経過後は株式の処分は可能ですが、売却・贈与した場合は猶予税額の全部または一部を納付する必要があります。ただし特例措置では経営困難時のM&A・廃業の際に「株式の時価での処分」と「猶予税額との差額の免除」が認められるため、以前より柔軟に対応できます。次世代への承継時に再度事業承継税制を適用することで最終的な免除も可能です。
後継者が息子ではなく番頭(従業員)の場合でも事業承継税制は使えますか?
はい、使えます。事業承継税制は後継者が「親族」である必要はありません。従業員・役員(同族関係者以外)でも、要件を満たせば適用できます。要件としては①会社の代表者であること②承継時に3年以上継続して役員等であること③承継後に発行済株式の50%超を同族関係者の中で最多保有すること、などです。親族以外への承継(いわゆる「番頭承継」)でも積極的に活用を検討してください。
複数の子どもに事業を承継させることはできますか?
特例措置では後継者を最大3人まで設定できます(一般措置は1人のみ)。ただし各後継者が発行済株式の10%以上を取得すること、かつ全後継者合計で50%超を取得することが要件です。複数後継者の場合は承継後の経営権・議決権の割合についても慎重に設計する必要があります。株主構成・経営権の分散による弊害(意思決定の遅延・株主間の対立)を防ぐための設計も合わせて検討してください。
自社株式の評価を下げるために今すぐできることはありますか?
主に4つの方法があります。①役員退職金の支給:先代経営者が退任する際に適正な役員退職金を支給すると会社の純資産が減少し純資産価額が下がります②不要資産(遊休不動産・有価証券等)の処分または活用③含み益のある資産の整理(評価引き下げ)④会社規模の基準を満たすように従業員数・売上を調整して類似業種比準方式の適用割合を高める——これらは時間がかかる対策のため、早期に事業承継専門の税理士と計画を立てることが重要です。
事業承継税制を使わずに株式を相続した場合、納税猶予はどう変わりますか?
事業承継税制を使わない場合、非上場株式の相続税は通常通り相続開始から10ヶ月以内に現金一括納付が原則です。現金が不足する場合は「延納(最大20年の分割払い)」または「物納(自社株式での納付)」を申請できます。ただし物納は株式での納付のため、国(税務署)が株主になるリスクがあります。延納も利子税がかかります。事業承継税制を使えばこれらの負担を大幅に軽減できます。
「事業承継税制の特例承継計画を早急に提出したい」「自社株式の評価額を試算してほしい」
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